2026年8月28日金曜日

➃加水分解に怯えて靴を見直した日

㏚ 午前中、久しぶりに靴箱を整理しようと思い立った。 夏が終わる前に一度チェックしておこう、と軽い気持ちで扉を開けた瞬間、 胸の奥がざわっとした。 お気に入りだった白いスニーカーの側面が、 なんとなく“ふやけて”見える。 触ってみると、指先にわずかにベタつきが残った。 「やばい…」と声が漏れた。 これ、加水分解の前兆だ。 思い返せば、梅雨の時期に一度も履かなかった。 湿気の多い日が続いて、靴箱の中も蒸れていたはず。 そのまま放置していた自分のズボラさが、 今になって跳ね返ってきた感じがした。 慌てて他の靴もチェックする。 黒いランニングシューズのソールに、 細かいひびのような線が入っている。 革靴の内側の合皮部分も、 よく見ると少しだけ浮いている。 どれも“まだ大丈夫”の範囲だけど、 確実に劣化の入口に立っている。 靴箱の中を空にして、 しばらく扉を開けたまま換気した。 湿気がこもっていた空気がゆっくり抜けていく。 その間に靴をひとつずつ陰干しして、 底の汚れを軽く拭き取った。 ただそれだけなのに、 気持ちが少し落ち着いていく。 「加水分解って、突然じゃなくて“じわじわ”来るんだな」と 改めて実感した。 素材の寿命だとわかっていても、 お気に入りの靴が傷んでいくのを見るのはやっぱり切ない。 夕方、靴箱に除湿剤を入れて、 靴の配置を少し変えた。 よく履く靴は手前に、 季節ものは奥に。 ただ並べ直しただけなのに、 靴箱が少しだけ“呼吸している”ように見えた。 今日の気づきは、 靴の劣化そのものよりも、 「気づいたときにすぐ動くと、気持ちが軽くなる」ということ。 加水分解に怯えた一日だったけれど、 最後はちょっとだけ前向きになれた。