2026年8月28日金曜日

⑥鶏胸肉をしっとり仕上げられた日

㏚ 昼前、冷蔵庫を開けたら鶏胸肉が一枚だけ残っていた。 「今日こそ、しっとり仕上げたい」と思いながらまな板に置いた瞬間、 過去のパサパサ事件が頭をよぎる。 胸肉はいつも“うまくいく日”と“残念な日”の差が激しい。 まずは下処理。 ネットで見た“砂糖を少し揉み込むと柔らかくなる”という方法を思い出し、 小さじ1だけ振って揉み込んでみた。 ここまでは順調……と思ったら、 勢いよく揉みすぎて、繊維が少し崩れた。 「あ、やっちゃった」と軽く落ち込む。 気を取り直してそぎ切りにする。 厚みが均一になるようにゆっくり包丁を入れると、 さっきの失敗が嘘みたいにきれいな断面が出てきた。 料理って、ひとつ失敗しても次の工程で気持ちが戻るから不思議だ。 片栗粉を薄くまぶして、 フライパンに油を少しだけ。 弱火でじっくり焼き始めると、 胸肉がふわっと白くなっていく。 強火にしたい衝動をぐっとこらえて、 ゆっくり、ゆっくり。 途中で裏返したとき、 表面がつるんとしていて、 「あ、今日はいけるかもしれない」と思った。 料理中にこういう“手応えの瞬間”が来ると嬉しい。 味付けはシンプルに塩と酒少し。 仕上げにフタをして1分休ませる。 この“余熱タイム”を忘れるとパサつくのを、 過去の失敗で学んだ。 皿に盛ってひと口食べた瞬間、 思わず「しっとりしてる…!」と声が出た。 繊維がほどけるような柔らかさで、 胸肉とは思えないほどジューシー。 下処理の失敗があったのに、 最後はちゃんと美味しく仕上がった。 料理って、 途中で落ち込んでも、 最後に成功すると全部チャラになる。 今日の胸肉は、そんな“救われた日”だった。